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Online Exhibition

Dear Art
Online Exhibition
Ed.4 My own vision

April 15, 2022

桜の季節が過ぎ去り、初夏の暖かな日差しと爽やかな風が心地よい日々がやってきました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

WITHコロナ生活も3年目を迎えますが、まだまだ気軽なお出かけの難しい状況は続いています。
Dear Artでは、本年も各地の卒業展覧会を巡り、より多くの方々に若手アーティストとその作品の魅力をお届けするべく、オンラインエキシビジョンを開催いたします。

瑞々しい感性で自分の内面世界を真摯に見つめ、独自の手法で表現する若手アーティストたちの作品は、長引くSTAY HOMEの日々の中自分と向き合う時間の増えた私たちに、自分をじっくり見つめるための勇気やアイデアを与えてくれるようです。

忙しない日々の合間の一息に、ぜひゆっくりご覧いただき、
気になる作品があればお気軽にお問い合わせくださいませ。

Cover photo : credit to Ryo Yoshimi

Artist 01
Midori Arai
新井碧

手繰り寄せる#11 / 2022 / pastel,pencil and oil on canvas
Midori Arai 新井碧
Not For Sale 個人蔵
※本作品は、サイト上でのお取り扱いがございません。

京都芸術大学 大学院修了展に足を運び新井のブースを訪れると、そこには2メートルを超える大きな作品が3点並んでいました。視界いっぱいの鮮やかな色彩と、作品全体に走る線を目で追う時の心地よいリズム感に、すぐ引き込まれたことを覚えています。
我に帰って少し離れて見てみると、その線が組まれた手のシルエットを描いていることに気がつきます。誰かが合掌して祈っているようにも、二人が手を重ね合っているようにも見えるそれになんとも言えず心を打たれて、そこに込められた想いが知りたくなりました。

新井は、「共生の時代であるからこそ生命の有限性について思考すること」をコンセプトにしているといいます。また制作にあたっては、新井の身体の動きやその時の感情がそのまま反映されやすいように、自然なストロークで線を描くことや、無意識に生まれる余白などを大切にしているのだそうです。そこにはいわば、新井の生きた時間がそのまま閉じ込められていると言えるのかもしれません。
確かに作品の線や色を目で追っているうちに、大きく体を動かしながら線を描く新井の行為を追体験しているような感覚を得るように思います。けれどもそれはあくまで自分の身体に起きている現象であり、新井の行為の完全な再現ではない……そんなことを思うと、ふと、この絵に描かれた手がまるで、鑑賞者と描き手がお互いに理解し合おうと歩み寄り触れ合っているかのように感じられるのです。
人々の生活や思想が多様化した社会では、異なる価値観同士で衝突し合うことも少なくありません。本当の意味で他人と分かり合えることなんてないのかも、と不安になることもあります。それでも人は解り合おうと、言葉や表現をつくしているのだということを思い出させてくれる作品ではないでしょうか。

Artist 02
Shogo Harada
原田匠悟

Untitled(Quiet) / 2022 / Oil on Canvas
Shogo Harada 原田匠悟
Not For Sale 個人蔵
※本作品は、サイト上でのお取り扱いがございません。

京都芸術大学大学院で絵画を学ぶ原田の作品を初めて見かけたのは、同大学院の修了展でした。ふと通りがかった部屋でその作品を目にしたとき、思わずその中に引き込まれるような気持ちになって立ち止まったことを覚えています。ひと目で彼の作品とわかるような独特の流れるようなストロークの中には、車の外を流れる景色や人が何かに手を差し出している様子など、よくあるワンシーンが描かれているはずなのに、なぜか私たちが今立っている場所とは異なる世界がそこに広がっているような気がしたのです。その感覚の理由が知りたいと思い、原田に話を聞いてみました。
「元々自分が死んだ後のこの世界に興味があり、目の前の風景について、私はそれに干渉しないように、その世界から距離を取るようにして眺めることがよくあります。これは、いわば自分のいなくなった世界の景色なのです。自らが積極的に関わりさえしなければ、自分がいなくなった後の景色も大して変わらない。ぼーっと景色を眺めて何もしない、そうした時間を無為に過ごす行為はある種のニヒリズムを肯定していると思います」
改めて作品を見てみると、確かにその筆致やモチーフの捉え方は、絵画の中に独自の時間の流れと私たちの距離感を作り出しているようです。目の前の世界から取り残されてしまったような焦燥感を感じる中で、けれどもどこかその風景への愛しさも感じるのは何故なのでしょうか。
「全て等しく無価値で、何でもない。全てに違いがあるだけ。何者でなくても良い。何もしなくて良い。私の絵はそのような考え、視点が元になっています」
原田は、絵画を制作する際の初期衝動をこう語ります。おそらくそこには、多くの人が感じたことのある”自分の手の届く範囲の狭さ、無力さ”を目を逸らさずに見つめて肯定する原田の暖かな眼差しがあり、彼の作品が人を惹きつける理由の一つはそこにあるのではないかと思うのでした。

Artist 03
Honoka Okuyama
奥山帆夏

奥山の作品を初めて目にしたのは、東京藝術大学の卒業・修了作品展でのことでした。北海道で生まれ育ち、自然とともにある生活を送ってきた奥山だからこそ描くことのできるリアルな木々の描写と、そこに溶け込むように重ねられた抽象的な色やかたちが印象的で、まるで深い森の中を思索にふけりながらあてどなく散歩している時のような心地よさを感じたことを覚えています。
どうしたら、このような景色が描けるのでしょうか。奥山は、「生まれ育った場所の自然をモチーフとし、 日々抱く欠落感、郷愁の想いを解きながら人々の心情に寄り添えるものを描く。具体的な形態の中の抽象的イメージを探り出しながら、地と図が絡み合うように筆を置く事で視点が迷う感覚を生み出す」
「季節の移ろい、匂い、天気など、日常の中で変わらずやってくる変化に、対応するように筆を置くこと。人のパーソナルな記憶に入り込むための絵画作りを目指している」と言います。
自身が置かれた環境や自然と丁寧に向き合っているだけでなく、それを観る人々の内側にある自然までも想いながら描かれているからこそ、作品の前に立った時、見知らぬ森の中でも安心して彷徨うことができるような居心地の良さがあるのかもしれません。その日の環境や心持ちによって、眺めるたびに新しい発見をもたらしてくれそうな作品をぜひご覧ください。

Artist 04
Izumi Abe
阿部 泉

多摩美術大学の卒業制作展・大学院修了制作展を訪れ、ある部屋で阿部の作品に囲まれた時、その穏やかな色彩と部分的に溶け合っているようなタッチに、まるでおぼろげな夢の中にいるかのような心持ちとなったことを覚えています。これは現実の風景なのか、それともこの世にはない、想像の世界なのか……。阿部本人によるとこの作品は、かつてよく通りがかっていたボロボロの社宅の景色とそこでの生活がテーマになっていて、実際にスケッチを行った上で制作しているのだそうです。久しぶりにその社宅を訪れた際、記憶と全く異なる風景が広がっていたこと、そして自分の記憶の中の景色も色あせておぼろげになっていることを通して、かつてあったはずの風景はもはや、記憶の中にも現実にもどこにも存在し得ないということを再確認したという阿部は、それでもわずかに残っている記憶と、現実の場所のイメージをつなぎ合わせることで、自分にとっての新しい居場所を見出したかったのだ、と語ります。
恐ろしいスピードで絶えず変化し、抱え切れないほどの情報が飛び交う現代社会の中で、それでも記憶に残っていくものを懸命に手元に手繰り寄せて、現実と結び付けながら、今を生きていくことの尊さを感じさせてくれる阿部の作品を、ぜひお手元でお楽しみいただけたらと思います。

いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したアーティストの中から、2年後5年後、10年後に国際的な人気を獲得する人気アーティストが出るかもしれません。そんなことを想像していただくのも、また一興ではないでしょうか。
お気に召した作品や、気になる点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Dear Artでは、今後も若手アーティストの皆様のお力になれるよう継続して本展覧会を開催していく予定です。次回も楽しみにお待ちください。